「債券型投資信託=安全」と思われがちですが、

実際は“株式より値動きが小さい傾向”というだけで、

価格が下がる局面もあります。

 

本稿では、債券型投信の仕組みから主要リスク、メリット、商品選びのポイント、

実践的なポートフォリオへの組み込み方まで、

初めての方にもわかりやすく徹底解説します。

債券型投信の基本

債券は国や企業が発行する借用証書で、

投資家は利息(クーポン)を受け取り、

満期には元本の償還が期待できます。

 

債券型投信は、複数の債券に分散投資するファンドで、

利息収入(インカム)と価格変動(キャピタルゲイン/ロス)がリターンの源泉です。

個別債券より少額で分散でき、運用・利払い・銘柄入替を

プロに委ねられるのが魅力です。

“安全”と誤解されやすい理由

  • 株式に比べてボラティリティが低い(価格の振れ幅が小さい傾向)
  • 利息収入が見込め、リターンが読みにくい株式より計画が立てやすい
  • 信用力の高い国債中心ファンドは、極端な下落が相対的に少ない

とはいえ「常に価格が安定」ではありません。

特に金利上昇局面では基準価額が下落しやすく、

外債ファンドでは通貨の影響で値動きが大きくなることもあります。

債券型投信の主要リスク

1. 金利リスク(価格と金利は逆方向)

金利が上がると既発債の相対的魅力が下がるため価格は下落、

金利が下がると価格は上昇します。

 

価格感応度の目安がデュレーションで、たとえばデュレーション5年のファンドは、

金利が1%上がると理論上約5%下落、1%下がると約5%上昇と見積もれます。

2. クレジット(信用)リスク

発行体の財務悪化やデフォルト(債務不履行)で価格が急落する可能性。

ハイイールド債中心ファンドは利回りが高い一方、

景気後退局面では下落幅が大きくなる傾向があります。

格付やセクター分散、ファンドの銘柄選択方針を確認しましょう。

3. 流動性リスク

市場ストレス時に売買が成立しにくくなるリスク。

スプレッド拡大で基準価額に下押し圧力がかかったり、

解約対応で不利な価格で売却せざるを得ない場合があります。

4. 通貨リスク(外債ファンド)

為替変動により円換算の基準価額が増減します。

ヘッジ付きファンドは為替影響を抑えられる代わりに、

ヘッジコストが長期的なリターンを押し下げる点に注意。

5. インフレ・コスト・再投資リスク

  • インフレ
    実質購買力が目減り。実質金利がマイナスなら、
    名目の安定だけでは資産保全にならない場合も。
  • コスト
    信託報酬が高いファンドは長期で複利的に効いて実収益を圧迫。
  • 再投資
    キャッシュフロー(クーポン)を低金利環境で再投資するほど総合リターンは低下。

債券型投信のメリット

  • 価格変動の緩和:株式に対する緩衝材となり、ポートフォリオのドローダウンを抑える
  • インカムの安定性:配当より比較的一貫した利払いが期待できる(ただし保証ではない)
  • 分散投資:多銘柄に分散し、個別債券固有のリスクを低減
  • 資産配分の軸:株式が下落したときに債券を売って株式を買う「リバランス」の弾に
  • 少額・自動化:積立で時間分散、再投資で複利効果も期待

商品選びのチェックポイント

  1. デュレーション
    金利感応度。金利上昇に弱いと感じるなら短期~中期中心を選ぶ。
  2. 信用格付・組入れ構成
    国債中心か社債・ハイイールドを含むか。景気局面に合うかを確認。
  3. 通貨・ヘッジ
    外債は「為替ヘッジあり/なし」でリスク・コストが大きく変わる。
  4. コスト
    信託報酬・売買手数料・実質的な運用コスト。インデックス型は一般に低コスト。
  5. 分配方針
    受取型は手取りが得やすい一方、再投資型は複利効果を最大化。
  6. 規模と流動性
    純資産規模が極端に小さいファンドは繰上償還リスクや売買影響に注意。

ケース別の使い分け

  • 守り重視
    短期国債・投資適格社債の短中期インデックス型で金利・信用を抑制。
  • 利回り重視
    投資適格コア+ハイイールドを少量ブレンド。ただし景気後退時の下落に備える。
  • 為替で攻める/守る
    外債ヘッジなしは通貨分散、ヘッジありは金利特性だけを取りに行く。

実践:ポートフォリオへの組み入れ例

株式60%・債券40%のシンプル配分でも、

株式100%に比べて大幅にボラティリティを抑えられます。

 

年1回の定率リバランス(例:各資産±5%乖離で実行)をルール化し、

下落局面で“安くなった資産を買う”仕組みを自動的に回します。

よくある疑問

Q. 預金の代わりになる?

A. 基本的に代わりにはなりません。預金は元本保証、債券投信は基準価額が変動します。

生活費6か月分などの緊急資金は預金で確保し、余裕資金を債券投信へ。

Q. 金利上昇が怖いときは?

A. デュレーションの短いファンドへ切替・分散、

分配金の再投資を継続、リバランスで機械的に対応。

まとめ

債券型投信は「安全一辺倒」ではありませんが、

仕組みとリスクを理解して使えば、資産形成の安定装置として強力です。

 

金利・信用・通貨・コストの4点を意識してファンドを選び、

積立とリバランスをルール化。預金と株式の“間”に位置づけることで、

ブレの小さな長期運用を実現できます。